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第1087話

Author: 宮サトリ
今の二人の関係は、ただ付き合うか別れるかという単純なものではなかった。

その間には、子どもたちと双方の両親複雑に絡み合った現実がある。

「どうした?」

瑛介の声が、弥生の思考を現実へ引き戻した。

顔を上げると、心配そうに彼がこちらを見ていた。

「ちゃんと食べた?」

実際のところ、弥生はほとんど口にしていなかった。

どうにも食欲がわかず、少し食べただけで胸いっぱいになってしまった。

「うん、もう十分」

そう言って笑みを作るが、瑛介の視線にはまだ不安が残っていた。

「もう少しだけ食べてみないか?」

彼の気遣いに、弥生はためらいながらも箸を取り、もう二口ほど口に運んだ。

「......これでいいわ」

それ以上は食べられず、箸を置いた彼女を見て、瑛介もそれ以上勧めることなく箸を下ろした。

「今日はどうだ?気分でも悪い?」

「そういうわけじゃない。ただ......」

弥生は言葉を濁し、彼を見つめたまま黙り込んだ。

あの自分だけ見える投稿のことを、話すべきか。

結局言葉は喉の奥で止まった。

記憶を失っている今の自分には、断片的な情報しか持っていない。

話しても、彼から聞く答えをどう受け止めていいのか、分からない。

それなら、思い出すまでは何も言わないほうがいい。

「......どうした?」

沈黙に耐えきれなくなった瑛介が、優しく問いかけた。

弥生は一瞬ためらい、やがて小さく息を吐いて言った。

「ごめん。今は話したくないの」

その正直な言葉に、瑛介は少し驚いたように目を瞬いた。

なんでもないとごまかすと思っていたからだ。

だが、彼女がそう言うのなら、これ以上追い詰めてはいけない。

「......わかった。無理に話さなくていい。でも、もし何か引っかかってるなら、いつでも僕に話してほしい。ひとりで抱え込むのは、良くないから」

その穏やかな声に、弥生の肩の力が抜けた。

「うん、わかった」

彼の理解と尊重が、彼女の胸を少しだけ軽くした。

翌朝。

一晩経つと、昨日の冠水はすっかり引いていた。

雲の隙間から日光が差し込み、街は明るさを取り戻していた。交通も完全に復旧した。

午前十時近く、弥生と瑛介はようやく出発の準備を整えた。

荷物はすでにトランクに積まれている。

昨夜のうちに、弥生ははっきりと伝えていた

「今日が
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